ふと、目が覚めた。



水が飲みたいって思った。

そっとティファとエアリスの眠るテントを抜け出し、昨日見つけた小川まで眠い身体を引きずって歩く。

アタシの身体は必死に睡魔と戦ってる。眠い、眠い・・・。

「うー、眠い・・・」

よろよろと歩きながら小川にたどり着いたら、予期せぬ人物がほとりに座ってた。



「ヴィンセンとー?」

アタシの声にゆっくり振り向くヴィンセント。

指に煙草を挟んで、口から紫煙を吐き出す。かなりビックリした。

「アンタ、煙草吸うんだね」

「・・たまに、だ」

てっきりシドだけかと思ってた。

余り見慣れない光景にちょっと戸惑ったけど、それより水、みず飲みたい。

ヴィンセントの隣に座って、掌で水をすくって飲む。

くぅ、うまい!

「・・余り飲むと目が冴えるんじゃないか?」

「だいじょーぶ、それに眠れなくなったらアンタと話でもするよ」

背中にちょっときつめのヴィンセントの視線を感じたけど気にしない。



「何で今日は吸ってるの?」

「眠れないから・・かもしれん」

「煙草ってさ、におうじゃん?」

決していいニオイじゃない、紫煙の香り。

それを指摘したらヴィンセントはもう一本の煙草に火をつけて自分を馬鹿にしたように笑った。

「元々私には硝煙の臭いがするだろう?」

そうだった、ちょっと鼻につくような独特の香り。

アタシは知らず知らずのうちに、それがヴィンセントの匂いだと勘違いしていたらしい。

服の胸辺りに思い切り顔を近づけて、沢山息を吸う。

「・・何をしているんだ?」

「ヴィンセントの匂いを覚えようと思って」

「お前は犬か」

「馬鹿にしないでよね」

ヴィンセントの胸に顔をぴったりつけ、体重をかけた。

ヴィンセントの匂い、これか?

「ヴィンセント、煙草吸わないでよ」

ヴィンセントが眼を見開く。

「だってさ、健康にも悪いし?煙草のにおいと混ざってよくわかんない」

そういったらヴィンセントは煙草の火を消して吸うのをやめてくれた。

アタシだって、アンタの健康だって考えるよ。・・・すごく不健康そうなアンタがこれ以上不健康になられてもこまるっつーの!

でもこれで本当のヴィンセントの匂いが覚えられるかな?あーでも銃は使い続けるのか。

「うーねむいー」

思考の波に浮き沈みしていたら急に眠たくなった。

「なら戻って寝る事だな」

「めんどくさい・・」

本当に眠くなってきたアタシはうとうとと目を閉じた。

ほっぺに感じるぬくもりが心地よい。

「おやすみー・・」

「寝るな・・!」

何だよ、お休みって返してくれてもいいじゃん?

まあいいか、ヴィンセントだし。

おやすみー。


おまけ