心臓が苦しい、血液が逆流しているんじゃないかと思うほど体中が熱い。
触れ合った唇が離れた瞬間アタシは大きく息を吸い込んだ。
名残惜しげにアタシとこいつをつなぐ銀の糸、それをみてこいつは満足げに笑う。
「・・ぜぇ・・あんたのせいで、呼吸困難で死ぬっつーの」
「そうか、それは困ったな」
形のいい唇の線を緩やかにカーブさせるヴィン。
それはめったに見せない笑顔、それも愉快そうに笑う。
アタシはそれが気に食わない。
アタシばっかり必死になってキスしてるところとか、ヴィンが笑う事によって自分が満足していることとか。
アタシばっかり心臓に負担がかかる、体中が熱い、なんなんだこれは!
すると黙っているアタシを不審に思ったのかヴィンの長い指がするりとアタシの頬を包んだ。
「・・暖かいな」
「ヴィンが冷たいんでしょ」
アタシも指を伸ばし、アタシより冷たい頬に指を滑らす。
ヴィンはそのまま間合いを詰め、またアタシたちは唇を重ねる。
ヴィンのそれが触れるたびに体中に甘い痺れが走った。
苦しい、頭の芯が揺らいでいる。これは毒だ。
「ヴィン、あんた毒もってるでしょ?」
「・・・毒?」
「うん、アタシを甘く痺れさせて、逃さない毒」
その言葉を聞いて、こいつは驚いて、また小さく笑った。
今日は可笑しいんじゃないか?こいつが珍しく沢山笑う。
ヴィンは耳元で小さく囁いてきた。
「・・お前の方が、十分に毒を持っている」
ああ、それは自惚れていいんですか。
アタシは貴方を痺れさせる愛という名の毒をもっていると。
アタシはそれを確認するように、今度は自分から口付けた。